たねつけばな (種漬花)
学名 |
Cardamine occulta
(C.scutata subsp.flexuosa sensu H.Hara, C.flexuosa var.debilis, C.debilis,
C.manshurica, C.autumnalis, C.arisanensis,
C.scutata auct. non Thunb., C.flexuosa auct. non With.,
C.parviflora auct. non L.) |
日本名 |
タネツケバナ |
科名(日本名) |
アブラナ科 |
日本語別名 |
タガラシ(田芥)、イイラギ、タビラコ |
漢名 |
碎米薺(サイベイセイ,suìmĭjì) |
科名(漢名) |
十字花(ジュウジカ,shízìhuā)科 |
漢語別名 |
柔彎曲碎米薺(ジュウワンキョクサイベイセイ, róu wānqū suìmĭjì)、曲枝碎米薺 |
英名 |
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2022/04/11 入間市宮寺 |
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辨 |
タネツケバナ Cardamine occulta(碎米薺)は、多く水田・畑・路傍などに生ずる、越年草または一年草。染色体は2n=64、8倍体。茎は株立ちし、多少毛がある。根出葉はロゼット状になり茎葉より大(ただし一年草のものは小さく少ない)。花期は3月下旬-5月、花瓣長約4mm、雄蕊は6個(四強)。長角果は線形、無毛で直立。
従来 Cardamine flexuosa と混同されてきたが、C.flexuosa は2n=32の4倍体で、北アフリカ・ヨーロッパ・西アジア産の別物。
次のものを別種として区別する意見もある。
コバノタネツケバナ(ヒメタネツケバナ・ニワサキタネツケバナ) C. manshurica
生活型が一年草のもの
アキノタネツケバナ C. autumnalis
秋に開花、葉腋から腋芽を出し、栄養繁殖を行う
似た近縁種に次のようなものなどがある。
タチタネツケバナ C. fallax
河原・林縁などやや乾燥した陽所に生ず。多毛。茎は直立、ジグザグせず。
小葉に小葉柄が明瞭。花期は5-6月。
コタネツケバナ(コカイタネツケバナ) C. kokaiensis
低地の湿所に生ずる越年草。茎は株立ちし、無毛又は基部に僅かに毛がある。
花期は3月下旬-4月。
ミチタネツケバナ C. hirsuta(粗毛碎米薺)
歐洲原産の帰化植物。一年草。乾燥した裸地に生じ、水湿地には見られない。
根出葉は開花期間中ロゼット状に残る。茎は殆ど無毛、直立。茎葉の小葉は線形。
花期は他種より早く(本州中部では3月上旬から)、開花後に茎の先端が伸長する。
花瓣長約2-3mm、雄蕊は殆どの場合4個。果柄は直立。
オオバタネツケバナ C. scutata(C.regeliana;圓齒碎米薺)
原野の水湿地・川辺に生ず。多年草。茎は殆ど無毛、基部は這って分枝し、上部は直立。
葉の頂小葉は大型、菱形状卵形。花期は3-6月(タネツケバナよりやや遅い)、
花瓣長約4mm、雄蕊は6個(四強)。果柄は斜上。
以上、
『改訂新版 日本の野生植物』
工藤洋「日本産アブラナ科タネツケバナ属雑草の生物学」
(『雑草研究』62(4),2017)
による。 |
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タネツケバナ属 Cardamine(碎米薺 suìmĭjì 属)には、世界の温帯に約160-200-260種がある。
マンシュウタネツケバナ C. amariformis
ミツバコンロンソウ C. anemonoides(C.matsumurae)
ヒトツバコンロンソウ f. suavis
ヒロハコンロンソウ C. appendiculata
オオマルバコンロンソウ C. arakiana 本州西部産 絶滅危惧IB類(EN,環境省RedList2020)
サジナズナ C. bellidifolia
C. calcicola(巖生碎米薺) 四川・雲南産
オクヤマナズナ C. changbaiana(C.resedifolia var.morii;天池碎米薺)
タイワンユリワサビ C. circaeoides(C.agyokumontana, C.reniformis,
C.violifolia;露珠碎米薺)臺灣・兩湖・兩廣・雲南・インドシナ・ヒマラヤ産
C. delavayi(洱源碎米薺) 雲南産
オオケタネツケバナ C. dentipetala(C.longifructa, C.dentipetala var.longifructa)
C. engleriana(光頭山碎米薺) 陝甘・兩湖・四川産
タチタネツケバナ C. fallax(C.scutata subsp.fallax, C.flexuosa var.fallax;
假彎曲碎米薺) 本州・四国・九州・朝鮮・陝西・山東・江蘇産
C. flexuosa(彎曲碎米薺) 歐洲・北アフリカ・ロシア・西アジア産
C. fragariifolia(C.smithiana;苺葉碎米薺) 浙江・江西・湖南・兩廣・雲貴・ヒマラヤ産
サイシュウタネツケバナ C. glechomifolia
C. gracilis(纎細碎米薺) 雲南産
C. griffithii(山芥碎米薺・山芥菜) 湖北・四川・貴州・雲南・ヒマラヤ産
ミチタネツケバナ C. hirsuta (粗毛碎米薺;E.Hairy bittercress)
『中国本草図録』Ⅹ/4615・『中国雑草原色図鑑』78
C. hygrophila(濕生碎米薺) 廣西・四川産
C. impatiens
ジャニンジン var. impatiens (彈裂碎米薺・水花菜・水菜花) 『中国本草図録』Ⅲ/1150
遼寧・吉林・黑龍江・華北・西北・湖北・華東・廣西・四川・貴州・雲南産
ホソバジャニンジン(ナガエジャニンジン) var. longipes
C. imprichtiana(心葉碎米薺)
コタネツケバナ(コカイタネツケバナ) C. kokaiensis(C.parviflora auct. non L.)
本州産
サジガラシ C. komarovii(翼柄碎米薺) 朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江産
コンロンソウ C. leucantha (C.dasyloba,C.cathayensis;白花碎米薺・
菜子七・山芥菜)
ミズタガラシ C. lyrata (水田碎米薺・白花石芥菜・小水田薺・水田薺)
ソコライソウ C. macrophylla(大葉碎米薺・普賢菜)
『雲南の植物』114・『中国本草図録』Ⅳ/1648
内蒙古・華北・陝甘・華東・兩湖・四川・貴州・雲南・ヒマラヤ・シベリア産
C. microzyga(小葉碎米薺) 四川・雲南産
C. multiflora(多花碎米薺) 四川・雲南産
コシジタネツケバナ C. niigatensis(C.scutata var.koshiensis)
ミヤマタネツケバナ C. nipponica
タネツケバナ C. occulta (碎米薺・柔彎曲碎米薺・蔊菜;
E.Flexiose bittercress)『中国雑草原色図鑑』77
C. parviflora (小花碎米薺;E.Smallflowered bittercress)
北半球の温帯・亜寒帯に産
C. polyphylla(石芥花) 『雲南の植物Ⅰ』86
ハナタネツケバナ C. pratensis(草地碎米薺・草甸碎米薺)
北半球の温帯・亜寒帯に産 絶滅危惧IB類(EN,環境省RedList2020)
ハイネツケバナ C. prorepens(伏水碎米薺) 朝鮮・吉林・黒龍江・内蒙古・シベリア産
コウライユリワサビ C. pseudowasabi
C. rockii(鞭枝碎米薺) 四川・雲南産
C. scaposa(C.denudata;裸莖碎米薺・落葉梅) 河北・山西・陝西産 『中国本草図録』Ⅴ/2120
エゾノジャニンジン C. schinziana
オオバタネツケバナ C. scutata(C.scutata ssp.regeliana,
C.flexuosa var.regeliana, C.flexuosa var.latifolia,
C.regeliana, c.scutata var.longiloba, C.scutata var.latifolia,
C.baishanensis;圓齒碎米薺)
C. simplex(單莖碎米薺) 雲南産
マルバコンロンソウ C. tanakae 本州・四国・九州・済州島産
C. tangutorum (紫花碎米薺・石芥菜) 『中国本草図録』Ⅳ/1649
オクヤマガラシ C. torrentis(C.kiusiana)
ミヤウチソウ(ホソバコンロンソウ) C. trifida(C.schulziana, C.tenuifolia,
Sphaerotorrhiza trifida, C. schulziana;細葉碎米薺・細葉石芥菜)
北海道・極東ロシア・遼寧・吉林・黑龍江・モンゴリア・シベリア・歐洲ロシア産
絶滅危惧IB類(EN,環境省RedList2020)
C. trifoliolata(三小葉碎米薺) 兩湖・四川・雲南・ヒマラヤ産
チシマタネツケバナ C. umbellata 極東ロシア・北米西北部産
アイヌワサビ(アイヌガラシ) C. valida
C. violacea(菫色碎米薺) 雲南・ヒマラヤ産
エゾワサビ C. yezoensis(C.fauriei, C.akitensis)
C. yunnanensis(雲南碎米薺) 四川・雲南・チベット産
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アブラナ科 Brassicaceae(十字花 shízìhuā 科)については、アブラナ科を見よ。 |
訓 |
「和名種漬花ハ苗代ヲ作ル直前ニ米ノ籾種ヲ水ニ漬ス時分ニ盛ンニ花サク故名ク、田芥ハ田間ニ生ズルからしノ意ナリ」(『牧野日本植物図鑑』)。
なお、正名のタガラシは、Ranunculus sceleratus(石龍芮・無毛野芹菜・鴨巴掌・水菫)。 |
小野蘭山『本草綱目啓蒙』17(1806)有名未用に、「碎米柴 タガラシ タネツケバナ佐州 カハタカナ薩州 スゞナ同上」と。 |
説 |
北海道・本州・四国・九州・琉球・朝鮮・臺灣・安徽・江蘇・湖南・廣西・ヒマラヤ・東南アジアに分布。 |
誌 |
若葉を食用にする。
「根葉のころ採って七草ガユに入れ、若い間はゆでて和え物・浸し物または汁の実にもする」(本山荻舟『飲食事典』)。 |
中国では、全草を薬用にする。 |
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